1 2026年2月28日、アメリカ合衆国及びイスラエル国は、イラン・イスラム共和国に対する武力攻撃を開始し、これにより子どもを含む多数の市民が死傷したと報道されている。他方、これに対する反撃行為として、イラン・イスラム共和国は、アメリカ合衆国及びイスラエル国以外の中東周辺諸国に対する攻撃を行い、民間人に死傷者が出たと報道されている。
ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月)以降、イスラエル国によるガザ侵攻(2023年10月)、アメリカ合衆国とイスラエル国によるイラン攻撃(2025年6月)、アメリカ合衆国によるベネズエラ攻撃(2026年1月)、そして今回のイラン攻撃と立て続けに武力紛争が起きており、それによって多数の人命が喪失している。
当会は、世界の各地で戦争や武力紛争が多発し、国際法秩序を無視して、市民の住宅やライフラインまでもが攻撃の対象とされ、膨大な数の犠牲者が生じている事態を深刻に憂慮している。
2 このような国際情勢の中、政府は、2026年4月21日、防衛装備移転三原則を改定する閣議決定を行うとともに、同原則の運用指針を改定し、完成品としての武器の輸出を救難、輸送、警戒、監視及び掃海のいわゆる「5類型」に限って認めるこれまでの制限を撤廃し、戦闘機、護衛艦、潜水艦等、直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする「自衛隊法上の武器」(以下「武器」という。)の完成品を輸出することを広く認めることとした。その移転先については、国連憲章の目的と原則に適合する方法で使用することを義務付ける国際約束の締結国に限定するとしているものの、他方で、武力闘争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国への移転も、特段の事情があれば可能とする。武器の移転の決定は、国家安全保障会議(NSC)が行い、国会に対しては事後的に通知する。
武器の移転先を限定し、移転後の管理状況のモニタリングを強化するとしているが、防衛装備移転三原則及び運用指針の改定により、日本が製造した武器により国際紛争が助長され、兵士や市民が殺傷される事態を招く危険性が大幅に高まることは否定できない。世界の各地で発生している戦争や武力紛争が、日本が生産・輸出する武器により助長され、拡大することになれば、日本が平和的手段・外交により国際平和を実現しようとし、平和国家として採用してきた武器輸出禁止の原則を損ない、憲法の恒久平和主義に基づいた平和国家としての日本の在り様を根本的に掘り崩すものになる。
3 また、高市首相は憲法改正に取り組む意欲を示しており、2026年4月の衆院憲法審査会で、自由民主党は、憲法9条への自衛隊明記、緊急事態時の国会議員任期延長などの緊急事態条項など4項目の条文起草委員会の設置を要求し、日本維新の会、国民民主党はこれに賛同した。
憲法改正案が今後、国会に提出され審議される可能性があるが、いずれも日本国憲法の理念や基本原理に深く関わり、我が国の国の在り方の基本を左右する課題ないしは問題を含んでおり、慎重な検討が必要であり、それが抱え持つ課題・問題についての情報が国民に対し多面的かつ豊富に提供され、国会の審議や国民の間の検討に十分な時間が確保されるなど、国民が憲法改正の是非を熟慮できる機会が保障されなければならない。
4 当会は、憲法記念日を迎えるにあたり、改めて日本国憲法の理念と基本原理の意義を確認し、我が国が日本国憲法の定める恒久平和主義と国際協調主義に基づき、国際社会における法の支配を堅持する役割を果たし、平和国家として武器輸出により国際紛争を助長しないことを祈念するとともに、現在見られる憲法改正の動きに対して、基本的人権の擁護を使命とする弁護士の団体として、憲法改正案に含まれる課題・問題について国民に熟慮の機会を保障することの実現に向けた活動に取り組んでいく決意である。
2026年(令和8年)5月3日
山形県弁護士会
会長 手 塚 孝 樹