令和5年、消費生活相談件数は90万件台と高止まり、被害・トラブル額の推計は過去最高の約8.8兆円に達した。65歳以上の高齢者の被害が大きな割合を占め、被害も多様化・高度化している。
この傾向は山形県内においても同様であり、令和5年度の相談件数全体に占める65歳以上の高齢者の相談割合が33.8%と過去最高となっている。また、全相談に占める市町村の相談窓口への相談割合は約60%となっており、住民にとって身近な地方公共団体の相談窓口の充実が必要不可欠である。
地方の強化策として国による交付金等が措置され、補助率10割で、消費生活相談員の人件費にも使える交付金(旧地方消費者行政強化交付金、現消費者行政推進事業に対する地方消費者行政強化交付金)が、長年地方の相談体制を下支えしてきた。しかし、その交付金は、定められた活用期限の到来により、令和6、7年度に多くの地方公共団体で、令和9年度には全ての地方公共団体で終了する。
地方公共団体の自主財源は増加してはいるものの十分な程度には達しておらず、そのような状況下で交付金が終了することにより、特に小規模な地方公共団体において、相談窓口の維持が困難になったり、交付金で実施してきた啓発・消費者教育、消費者被害防止対策等の事業の継続が困難となるなど、地方消費者行政が後退・縮小するおそれがある。
全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)の刷新及び消費生活相談のデジタル化による財政上の負担、消費生活相談員の担い手不足なども、地方消費者行政の安定的実施を妨げる要因となっている。
消費者庁には地方支分部局がないことも相まって、地方公共団体は国の消費者行政の一端を担っている。特に、PIO-NET登録業務は、国の消費者行政を支える柱であり、その費用は国が負担すべきである。
また、地方消費者行政が真に機能するためには、差止請求訴訟の提起や裁判外の申入れ活動により行政庁の役割の代替機能を果たしているともいえる適格消費者団体や消費者被害防止のための見守りネットワーク、一般消費者に向けた注意喚起等を期待されている地域の消費者団体を育成・支援することが不可欠である。
よって、国において、地方消費者行政の拡充・強化を図るため、次の措置を講ずるよう求める。
2025年(令和7年)4月25日
山形県弁護士会
会長 伊 藤 陽 介