Yamagata Bar Association
形県護士会

 山形県弁護士会について

 

閣議決定・再提出された入管法改正案に反対する会長声明


 

令和5年3月7日、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(以下、「再提出法案」という。)が閣議決定され国会に提出された。

 この再提出法案は、2021年の通常国会で廃案になった出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」という。)の改正案(以下「旧法案」という。)の骨子を変えないまま再提出したものである。当会は、旧法案の提出に先立つ「収容・送還に関する専門部会」の提言に対して反対意見を述べたところであり(2020年11月4日)、今回の再提出法案についても、以下の理由から、強く反対する。

 

  • 1 現在の入管法では、難民認定申請中であれば、申請の回数や理由を問わず、一律に送還手続が停止される。しかし、再提出法案では、難民申請中の送還停止を原則2回までとし、3回目以降の難民申請については送還を可能とする、送還停止効の例外を定めるものである。
     そもそも、難民認定率は、令和3年度の統計によると、イギリスでは60%超、アメリカでは30%超等、他の先進国では比較的高い割合で難民認定がなされるにもかかわらず、日本は僅か0.7%にとどまり、1%にも満たないのが現状である。難民申請者の中には、生命に及ぶ迫害のゆえに本国から日本へ逃げてきた難民であるにもかかわらず、日本においては複数回の申請の末にようやく難民認定される者も相当数いる。このような現状で難民申請者の強制的な送還を可能とすることは、難民申請者の生命身体に差し迫った危険を及ぼすことが強く懸念されるものであり、迫害を受けるおそれのある地域に送還してはならないとする「ノン・ルフールマン原則」(難民条約第33条1項)に反することになる。
  • 2 それだけでなく、再提出法案には、退去強制令書が発付されたものの日本から退去しない被退去強制者について、一定の期日までに日本から退去するよう命令する制度を創設し、その命令違反に対する刑事罰の定めがある。被退去強制者の中には、上述のように本国において迫害を受ける恐れのある難民であるにもかかわらず難民認定がなされないためにやむを得ず複数回難民申請行っている者や、日本に家族がいる場合等、様々な事情により日本から退去できない者もいる。そのような者が国外退去を拒否しただけで「犯罪者」として扱われ、処罰対象とされることは、非人道的であり、憲法や国際人権法の観点からも不適切である。
  • 3 現行入管法については、人の移動の自由を制限する収容にあたって司法審査がなく、収容期間の上限が定められていないことについて、人権侵害の懸念が指摘されてきた。2022年11月3日には、国連人権委員会が、第7回総括所見において、日本政府に対し、2017年から2021年の間に3人の被収容者が死亡したことを指摘し、入管収容について被収容者の手続的な権利侵害の懸念を表明して適切な措置を求めた。
     しかし、再提出法案には入管収容にあたっての司法審査や収容期間の上限の導入に関する規定はなく、依然として収容や釈放の決定権限が入管庁に委ねられている。

 

 以上のとおり、再提出法案は、従前から指摘されている入管法の問題点について根本的な改善をせず、却って日本への在留を希望する外国人に対する重大な人権侵害の恐れが増大する内容となっている。当会としては、このような入管法改改正に、強く反対する。

 

 

2023年(令和5年)3月13日

 

山形県弁護士会

会長 小 野 寺 弘 行


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