Yamagata Bar Association
形県護士会

 山形県弁護士会について

 

憲法記念日を迎えるにあたっての会長声明

 

 

 本日,日本国憲法が施行されてから満72年となる憲法記念日を迎えた。

 日本国憲法は,アジア・太平洋戦争への痛切な反省を踏まえて制定されたものであり,個人の自由と権利を保障するため憲法により国家権力を制限するという立憲主義を基本理念とし,国民主権,基本的人権の尊重,平和主義を基本原理としている。この憲法のもとで,主権者たる日本国民は,すべての国民が個人として尊重される社会,戦争をしない平和国家を築くべく努めてきた。その結果,70有余年の長い間,戦争のない時代を過ごすことができた。

 

 現在,自由民主党において4項目(憲法9条に自衛隊を明記,緊急事態条項の創設,参議院議員選挙区の合区解消,教育の充実)の憲法改正案が論議されており,そうした内容の憲法改正案が今後,国会に提出され審議される可能性があるが,いずれの項目も慎重な検討が必要であり,ことに自衛隊明記案は日本国憲法の理念や基本原理に深く関わり,日本の国の在り方の基本を左右する課題ないしは問題を含んでいる。

 したがって,上記憲法改正案については,それが抱え持つ課題・問題についての情報が国民に対し多面的かつ豊富に提供され,国会の審議や国民の間の検討に十分な時間が確保されるなど,国民が憲法改正の是非を熟慮できる機会が保障されなければならない。

 

 また,実際に憲法改正手続がとられる場合には,国民投票が公正・公平な手続を通じて実施され,国民投票に国民の意思を正確に反映させることが必要である。この点,憲法改正手続法(国民投票法)制定時に参議院の附帯決議で,テレビ,ラジオの有料意見広告規制及び最低投票率制度については施行までに必要な検討を加えることとされていたが,その後も検討がなされず,昨年6月に国会に提出された憲法改正手続法改正案にも取り上げられていなかった。

 したがって,憲法改正手続法は次のとおり抜本的な改正が必要である。

 第1に,テレビ・ラジオを使用した有料広告の放送について,憲法改正案に対する賛成意見及び反対意見の公平性を確保するために,放送事業者の自主的な規律を尊重した上で,(1) 国民投票運動のための有料の広告放送(勧誘CM)に対する国民投票期日前14日間の禁止期間を延長すること,(2) 意見表明のための有料の広告放送(意見表明CM)を勧誘CMと同様の期間禁止すること,に関して法的規制の必要性を検討し,必要性を認めるときには憲法改正手続法105条を改正すべきである。

 第2に,テレビ・ラジオを使用した公費による憲法改正案の広報のための放送について,国民投票の際の憲法改正案の賛否に関する公平な判断材料を国民に提供するため,国民が視聴しやすい時間帯に必要かつ十分な量の放送枠を確保する規定を憲法改正手続法106条に設けるべきである。

 第3に,国民投票が成立するための最低投票率の規定を憲法改正手続法に新設すべきであり,その割合は,全国民の意思が十分反映されたと評価できるに足りるものとすべきである。

 

 よって,当会は,憲法記念日を迎えるにあたり,基本的人権の擁護を使命とする弁護士の団体として,改めて日本国憲法の理念と基本原理の意義を確認し,現在見られる憲法改正の動きに対して,改正案に含まれる課題・問題について国民に熟慮の機会を保障すること,憲法改正の発議に先立ち憲法改正手続法を見直すことを強く求め,その実現に向けた活動に取り組んで行く決意である。

 

2019年(令和元年)5月3日
山形県弁護士会
会長  脇山 拓


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